やまんばと

2018年6月からスイス・ジュネーブ在住。ヨーロッパの田舎、日本の地方をキーワードに発信。

ファームステイ@ポルトガルワイン農家

GWを利用して、ポーランドポルトと、ワインの生産で知られるDuoro川沿いの都市、Lamegoにあるワイン農家を訪れた。

日本だとポルトガルワインのイメージはあまりないかもしれないが、酒精強化ワインのポートワインと言うとしっくりくるのではないだろうか。食前後に飲む、甘くて度数の高いワインである。

私たちが今回滞在したQuinta do Fôjoは、予約サイト上で高レビュー(Booking.comの口コミ183件で評価9.7/10。2019/6/16時点)であったことが、今回滞在を決めた理由の一つになった。

Quintaは、ポルトガル語で農園。今回滞在した場所以外にも、同様にファームステイとして自宅を開放している場所がいくつかあるようだったが、なぜこの農園はこんなにも高評価を得ていたのだろうか。

 

エリザベートおばちゃんのホスピタリティ

これが一番大きいと思う。ホストのエリザベートがとにかく明るくパワフルでフレンドリー、適度な距離感で色々と気にかけてくれた。ほとんどのレビューでもエリザベートおばちゃんについて触れている。

まずは、最寄り駅に着いたところから。広大なワイン畑が広がる地域なので、アクセスは必ずしも良くはない。電車又はフェリーでReguaという場所で降りてからは車で10分程度の距離である。昼食を取った後、事前に伝えた送迎希望時間になると、駅前で彼女の自家用車で迎えに来てくれた。道中も今回の旅行がどうだったか等雑談が続く。

到着してからは、家の敷地を案内してくれた後、直前にワイナリー見学に私たちを押し込もうと近所のワイナリーに電話でかけあってくれたり、部屋も予約している屋根裏より自分(エリザベート)の部屋がベッドも広いので良ければ良いから確認してくれと言ってくれたり、ハイキングのおすすめコースを教えたり、食事を気にかけてくれたり、田舎のおばあちゃんを思い出す温かいコミュニケーションが心地よかった。

そして、どれも押し付けがましいものではなく、私たちがどうしたいかは最大限リスペクトしてくれる。

エリザベートおばちゃんは決して英語が流暢なわけではなく、かなり訛りも強かったが、それでも明るくパワフルにコミュニケーションをとってくれたので、終始楽しかった。

 

景色とこだわりの食材とゆったりとした時間

これはどんなファームステイでもある程度はあるのだろうと思うので、そこまで差別化要因にはならないのではないかと思うけれど、前提条件として必要と言う意味で紹介。

私たちが宿泊したのは、一家も住んでいる一軒家で、ワイン畑に囲まれていた。家の裏を上がった場所には、ワイン畑一帯を見下ろせるプールがある。

リビングのベランダから見る景色も絶景。 

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ここでひたすらゆっくりと時間が流れる。

4月でプールには寒かったので、プールサイドで日光を浴びながら本を読んでいたが、いったん家に戻りに降りてみると、エリザベートとそのお母さんは昼寝をしている。これもまた、日本の田舎の祖父母を思い出させる。

その後、ワイン畑の中をランニングの合間にDuoro川のほとりを歩いたのは最高に気持ちよかった。周りにはワイン畑ばかりで歩いて行ける範囲で何かがあるわけではなく、人もほとんど見かけない。そこでふと立ち止まって綺麗な空気を吸って、綺麗に反射する水面を眺めるのである。私にとっては最高の贅沢だった。

それから、夜と朝に食べたこだわりの食材。

夜は移動の疲れもあって、駅の方に出ることはせず、そのまま家でサラダとハムとチーズ、ワイン、ポートワインをいただいた。サラダは、農園で採れた野菜に、自家製のオリーブオイルとバルサミコをかける。さすがにハムとチーズはそこで作っているわけではないが、そして既に忘れてしまったのだけど、近くで作られたこだわりのもの。

ポートワインは、倉庫を今シーズンに向け清掃するために在庫を奥にしまって取れないかもとのことで、結局取ることはできなかったのだが、自家用の残り少ないポートワインを最後サービスで出してくれた。

二人分で色々飲み食いして20ユーロも行かなかったのだから、リーズナブルすぎる。

朝は、自家製ジャムにチーズ、近所のベーカリーのエッグタルト(ポルトの名産品)。一番おいしくて何度もお替りしたのが、農園で採れたオレンジのジュース。本当においしかった。

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終わりに

エリザベートおばちゃんの一家は、ワインの生産だけでは、生計が難しく、家計のプラスにするために、ファームステイを開始したとのこと。ゲストを家族のように迎え、唯一無二の贅沢な田舎時間を提供する。これが、Quinta do Fôjoの成功の秘訣ではないだろうか。

1泊8,000円で家の3部屋を宿泊用に開放しており、私たちが泊まっていた期間は、ドイツ人のカップルと、ドイツ人とアメリカ人夫婦の子連れ家族が滞在していて満室となっていた。ドイツ人カップルは私たちとたぶんあまり変わらないアラサー世代。ドライブで北ポルトガルから来たという。子連れ家族は、1週間滞在しそこを拠点にしながら色々なワイナリーを訪れたらしい。アットホームな空間は、ゲスト間の自然とコミュニケーションも生む。

大都市が均一化していく中、旅の思い出を鮮やかにするのは、人と人の温かい出会い、その土地独自のものだと、色々な場所を旅する中で思う。

Quinta do Fôjoは、その土地にも助けられながら、ユニークな旅の思い出を彩るエリザベートおばちゃんのパワーに支えられていた。