やまんばと

2018年6月からスイス・ジュネーブ在住。ヨーロッパの田舎、日本の地方をキーワードに発信。

「フランスの最も美しい村」に魅せられて

これまで訪れた「最も美しい村」は4つーレマン湖沿いのイヴォワール(Yvoire)、リヨン近くのペルージュ(Pérouges)、アルザスのリクヴィル(Riquewihr)とエギスハイム(Eguisheim)である。

面白いのが、どの村もキャラが立っていること。

まず、レマン湖を望む、花の町イヴォワールジュネーブからは車で30分ちょっとでスイスにかなり近い。人口は1,000人未満で、町自体もとても小さく、15分も歩けば町をぐるっと周ることができる。この街の良かったところは、綺麗さもさることながら、レストランが充実していること。ミシュランプレートのレストランがこんな小さな町に3軒もある。

それから、中世に迷い込んでしまう町、ペルージュ。こちらはフランス第二の都市、リヨンから車で40分ほどの距離。人口は約1200人で、中世の城壁と石畳が綺麗な町だ。映画三銃士の撮影も行われたらしい。ここにあるAirbnbに宿泊したが、家主は町の外から引っ越してきて空き家を買ってリノベーションをしたとのこと。思わず住んでしまいたくなるのも納得の雰囲気のある町だった。

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イヴォワールで食べたランチ、一人25ユーロ。右は、ペルージュで宿泊したAirbnb

最後に、おいしいアルザス・ワインが飲みたくて訪れたリクヴィルとエギスハイムは、ワインのおいしさはどちらもあるのだが、ドイツらしい木組みの素敵な建築物がたくさんあるリクヴィルと、花が綺麗なエギスハイムとで、近接している村なのに雰囲気が異なる。エギスハイムは、花のナショナルグランプリで最優秀の成績をおさめ続けているらしい。

全くの余談だが、フランスでワイナリー巡りをする場合、個人的にはアルザスは入門編としてかなりおすすめ。普通にはとても手が届かない5大シャトーの存在感が大きすぎるボルドーや、最低価格が高いブルゴーニュと比べて、アルザスでは、試飲にお金を取らず、家族経営のワイナリーでアットホームな雰囲気でハードルが低い。更に、試飲後買うとなった時に1本10ユーロも出せばおいしい白ワインを手に入れることができるのである。

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町の景色を取り忘れたので、ワイン試飲の様子(左)とアルザス風ポトフ(右)

この「フランスの最も美しい村(Les Plus Beaux Villages de France)」、なんと158もある(2019年9月時点)。たかだか4つ訪れただけで、語る資格もないのだが、地域おこしの取組として、ここで簡単に紹介したい。

1982年に、質の良い遺産を多く持つ田舎の小さな村の観光促進を目的に作られた、村の連合。資格はく奪もある、厳格な審査が行われているらしい。各村が人口一人当たり3ユーロの会費を払うことで運営されている。村の選定に当たっての基準は以下のとおり(出展:Wikipedia)。

1. 人口が2000人を超えないこと

2. 最低2つの遺産・遺跡(景観、芸術、科学、歴史の面で)があり土地利用計画で保護のための政策が行われていること

3. 地域議会の投票により地域コミュニティの同意が得られていること

この取組は世界各国にも広がり、べルギー、イタリア、カナダ等でも類似の連合がある。更に、日本でも北海道美瑛町町長の呼びかけで2006年から「日本で最も美しい村連合」があるとのこと。

私自身は、正直上述の4つの村を目的に観光したわけではなかった。ついでに立ち寄れるから、ということである。ただ、「最も美しい村」というラベルは、ついで、を決める上で大きな判断材料になった。いわば、観光地のミシュランガイドの役割を果たしているのである。せっかく車で旅行していて休憩するなら、無機質なサービスエリアよりは、少し遠回りしても風情のある町を訪れたいと思うものだ。私のような外国人でさえこれを参照するのだから、観光促進という目的に資するものではあるのだろうと思う。最も美しい村の協会は、連合に入ることで、10-50%の観光客増加が見込まれるとしている。

ただ、本当に観光促進ができているのかどうかはなかなか判断が難しい。私が行った村々は、観光資源の豊かな場所からアクセスが良いという立地に恵まれた場所であるという点で偏りはあるからだ。

ちなみに、日本の取組の基準は以下のとおり(出典:連合のHP)。

1|人口が概ね1万人以下であること

2|地域資源が2つ以上あること
・景観-生活の営みにより作られた景観(伝統的なまちなみや里山・里海)
・文化-昔ながらの祭りや芸能、郷土文化など

3|連合が評価する地域資源を活かす活動があること
・美しい景観に配慮したまちづくりを行っている
・住民による工夫した地域活動を行っている
・地域特有の工芸品や生活様式を頑なに守っている

フランス版との違いとてしては、人口規模の大きさと地域の合意が基準となっていないことだろうか。日本では2018年1現在で63か所で、日本の人口が単純にフランスの二倍近くあることを考えると、まだまだ伸びる余地はあるように思うし、HPも日本語のみで、外国人旅行客のミシュランにはなるには色々な改善ができそうである。

これからも美しい村は訪れていこうと思うので、続報に乞うご期待!