やまんばと

2018年6月からスイス・ジュネーブ在住。ヨーロッパの田舎、日本の地方をキーワードに発信。

スイスの小さな村のスノーシューと地元の名産めぐり

2月になるが、スイス東部のChâteau-d'Œx(シャトーデ)という町のスノーシューのイベント、” Rallye du Goût”(味めぐり)に参加した。40フラン(約4,500円)で、約2時間のスノーシューでのハイキングと共に、地元生産者が立てる地元産品のスタンドをスタンプラリーように回って味わえるというイベントだ。とても楽しく素敵なイベントだったので紹介したい。

 

スイスの山里に人がたくさん集まったワケ

シャトーデは、人口約3千人の山里で、牧畜が盛ん。スイスの標高1000-1400メートル地帯で生産する、伝統のL’Etivazチーズの産地でもある。とはいえ、観光資源がそこまでなく、あえて行こうと思わない場所だ。日本から観光で訪れたときに行く、ツェルマットやユングフラウヨッホのような認知度の高い場所からは電車で3時間弱。寄り道に行くほどアクセスは良くない。私も今回このイベントを友人から聞くまでは全く知らなかった。

しかし、イベントに当日行ってみると大盛況。連れと誰もいなかったらどうしよう等と心配もしていたのだが、家族連れから友人同士、カップル、老夫婦まで、幅広い世代、構成の人が集まっていた。フランス語圏だが、英語もちらほら聞こえ、地元の内輪イベントでないことも分かった。

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生産者が出すチーズのブース(左)と地元ワイン(右)

魅力①地域を知る

当日は、12の生産者が、スノーシューでのハイキングコースに点々とスタンドを立て、彼らの生産したものが振舞われた。以下はその概要。見てのとおり、その土地で色んな種類の特産品があるわけではないので、ほとんどチーズ、たまに加工肉というすさまじい偏り。しかし、家族経営が中心のチーズはそれぞれ特色があり、どれも個性があって大変楽しめた。

生産者によるが、こだわりを英語でも説明してくれ、スーパーで買うチーズと違う顔が見えた。更に、スノーシューが終わった後に大きなホールでスープが振舞われたのだが、そこで地元のおじいちゃんおばあちゃんが演奏をしてくれていたのも、アットホームな感じがとても良かった。短時間だが、観光地では見れないスイスに触れられたのである。

  • L’Etivasチーズ3生産者(特定の製法に基づいて作られるチーズに与えられるAOPでL'Etivasに特化した生産者、有機牛乳にこだわる生産者、新しいチーズも製造始めた生産者等こだわりは様々)
  • 羊チーズ(Agroprixという賞?を2013年に受賞)
  • Tomme Fleurette(ソフトチーズ部門でスイスチーズ賞を受賞。私の一番のお気に入りでした)
  • ハードチーズに特化した生産者
  • Gruyère(グリュイエール)チーズ(閉鎖間近のチーズ工場を引き取った若手生産者によるチーズ。フォンデュに使われるチーズで有名)
  • 加工肉2生産者(サラミ、ハム、ソーセージ等。)
  • アルプス・ハーブ2生産者(シロップとお茶がそれぞれ一つ。シロップをお湯で割ってお茶のようにして飲む。寒いからだに良くしみた)
  • ハーブアロマ(これを足したチョコがあった)
  • ワイン(ちょうどコースの真ん中あたりで、白赤ワインどちらも振舞われた)

 魅力②楽しさ要素

おいしいだけで十分だが、何と言ってもこれをスノーシューと組み合わせるというのが良かった。スノーシュー雪駄を進化させたようなもので、多少雪深くてもこれを履けば滑らずスイスイ歩ける。集合場所に行ってチェックインをした後、スノーシューのサイズを合わせてくれて、簡単に出発の準備は整った。

更に、これを夜暗くなる時間帯にやるというのが、エンタメ性を更に高めていた。私たちは16時半という一番早い時間帯に行ったので、最初は明るかったのだが、後半暗くなると、ハイキングコース沿いに道しるべとして立てられたろうそくが道を照らしてとても幻想的になった。

魅力③破格の値段!

スイスはとにかく物価が高い。例えば、スノーシューを一日レンタルするだけで安くても50フランするし、チーズのプレートを頼めば15フランはする。それがレンタル込み、地元産品の食べ歩き+〆のスープとデザートで40フランなのである。

これが実現できているのは、最初は日本と同じで補助金かとも思ったが、企業のスポンサーを上手く得ているのも助けになっているようだった。気になって調べてみると、TSLというスノーシューのメーカーが協賛に名を連ねていた。スノーシュー代が浮くだけでもだいぶ違うだろう。企業からしてみても良いPRの場となるはずだ。

 

観光資源がなくても、外の資源(win-winを築ける企業、観光客)を動員して、地元をPRする、とても良い例ではないかと思う。